<掲載情報>
「ダブリンキャロル」
作 : コナー・マクファーソン
翻訳: 常田景子
演出 : 荒井遼
出演 : 首藤康之 山下リオ 小日向星一
2021年12月3〜9日 東演パラータ
美術・衣装 池宮城直美
衣装スーパーバイザー 為重友恵
照明 横原由祐
音響 藤田赤目
ヘアメイク 山本絵里子
ダイアローグコーチ 大西多摩恵
演出助手 三輪絢香
舞台監督 川口眞人
美術助手 佐久間優季
照明オペレーター 冨田訓広
音響オペレーター 松田朋子
大道具制作 唐崎修
版権コーディネート シアターライツ
映像収録 西尾智仁
宣伝美術 宇野奈津子
宣伝写真 井野敦晴
制作 吉越萌子
プロデューサー 毛利美咲
主催製作 幻都
企画制作 TSP
文化庁AFF補助対象事業
「のたうって角を曲がる言葉を持った動物」
何もかもが数字で測られるような世界、その凄まじいスピードによってこぼれ落ちるもの。ポロポロ落ちて忘れ去られたものをゆっくりと一つずつ拾って歩く人。それがコナー・マクファーソンさんだと思っています。理屈で片付けられない、言葉で整理できないものがある。生者も死者も妖精も共存する世界がある。
都電沿いの昭和の風景が残っている商店街をぶらぶら歩いていると、この路地を曲がったら、なんだかどこかこの辺りに、舞台となる葬儀屋さんがあるような気がしてきます。街角に佇む男。色んなことがあったのだろうと思わせるその表情。アイルランドでもなんでもない風景、その中にマクファーソンさんの描く人たちをふと見つける気がします。きっと精一杯生きているが故に矛盾に満ちた、愛くるしい人々。
彼は95年に『堰-The Weir-』が大ヒットした後にアルコール依存症になってしまった。自身を色濃く投影して書いたのが、2000年に初演された本作です。日本初演となる今回、作者が身を削って紡いだ言葉に向き合って稽古しています。「人間は言葉を持った動物」、彼のこの言葉が僕は非常に好きです。動物たちは、絶望し、立ち向かい、彷徨い歩き、のたうちまわる。なんとか角を曲がる。そんなことしかできないし、そんなことができたら最高ではないか。得体の知れない世界の中で生きることに、少し意味を見出すことができたら。こぼれ落ち忘れ去られたものが遠い島国でふっと顔を出し蘇る日のために。 2021.12 荒井遼
写真:阿部章仁